東京海上日動リスクコンサルティングは8月30日、国土交通省から「運輸安全マネジメント制度の浸透・定着に有効なセミナー等(認定セミナー)」を実施することができる民間機関の認定を受けた。民間企業としては第1号の認定となる。トラック、タクシー、バスなどの中小自動車運送事業者の経営者や担当者が対象となり、受講して一定の条件を満たせば地方運輸局による長期未監査を理由とした監査の対象から外れるなどのインセンティブが与えられる。同社はセミナー事業を通じて中小事業者の安全管理に対する自主的な取り組みを支援する。
認定を受けたセミナーの種類は、6区分あるうちの「ガイドライン」。運輸安全マネジメント制度が発足した過去の経緯や、これまでの変遷を説明した上で、運輸事業者に期待される安全管理の取り組み(2010年版ガイドラインの14項目)について事例を交えて解説する。講義時間は3時間以上、適切な教材を用いるなどの認定要件が定められている。同社は業界団体などを通じて、セミナー事業の展開を図る。
自動車運送事業者の経営管理部門の要員が受講し、セミナーを踏まえた取り組み状況を国交省に報告した結果、受講内容が活用されていることが確認されると、地方運輸局は長期末監査を理由とする巡回監査と呼出監査の対象から当該事業者を外すことができることから、事実上、事業者は両監査を免除される。国交省としては中小事業者の自主的な取り組みを促すことで、業界全体の安全管理文化の裾野を広げたい考えだ。
運輸安全マネジメント制度は06年10月に発足。陸・海・空の各運輸事業者が経営トップから現場まで一丸となって主体的に安全管理体制を構築・改善し、事業者内部の安全文化の醸成を促すことを目的とする。制度開始以降、大手・中堅事業者の取り組みが定着し、一定の効果が確認される一方、中小事業者については浸透が進んでおらず、事業者数が多すぎて国だけでは普及・啓発に手が足りない状況となっていた。
12年5月には、官民が連携して制度の普及・啓発を推進するために、「運輸安全マネジメント普及・啓発推進協議会」を設立。今回、民間機関などのノウハウを活用して制度を浸透させるために、7月22日付で通達を改正して認定セミナーを実施する仕組みを導入した。
東京海上日動リスクコンサルティングは以前から、自動車運送事業者への事故削減コンサルティング事業を展開しており、運輸安全マネジメント普及・啓発推進協議会にも参画。認定セミナー制度の導入をにらんで準備を進め、今回の第1号認定に至った。
また、昨今、自動車運送業者への取り組みを一段と強化しており、12年に全日本トラック協会から追突事故防止セミナーへの講師派遣要請を受けて全国約30カ所で実施した。
今年8月には同協会からドライブレコーダーの活用マニュアル作成業務を受託するなど高い評価を受けている。
同社は今回の認定を受けて、「リソースの限られた中小事業者も運輸安全マネジメントに向けてできるところから取り組んでください、というのがセミナーのコンセプトになっている。今回の活動を通じてできるだけ数多くの中小事業者をサポートし、安全な社会の実現に貢献できればと考えている」として、今後の普及に意欲を示している。